ボーイング有人飛行試験

ボーイング有人飛行試験
打ち上げ前準備中の打ち上げパッド上のボーイング スターライナーCFT
名称Boe-CFT[1]
任務種別試験飛行(英語版)
運用者ボーイング
任務期間~8日(計画)
特性
宇宙機ボーイング スターライナー カリプソ(英語版)
宇宙機種別ボーイング CST-100 スターライナー
製造者ボーイング
乗員
乗員数2
乗員
任務開始
打ち上げ日2024年6月5日 14:52 UTC以降
ロケットアトラスV N22[注釈 1]
打上げ場所ケープ・カナベラルSLC-41
打ち上げ請負者ユナイテッド・ローンチ・アライアンス
任務終了
着陸日TBD
着陸地点TBD[注釈 2]
軌道特性
参照座標地球周回軌道
体制低軌道
傾斜角51.66°
国際宇宙ステーションのドッキング(捕捉)
ドッキング ハーモニー 前方側
ドッキング(捕捉)日 TBD(計画)
分離日 TBD(計画)
ドッキング時間 TBD(計画)

ウィリアムズ(左)とウィルモア(右)
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ボーイング有人飛行試験
Boeing Starliner flights
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ボーイング有人飛行試験(ボーイングゆうじんひこうしけん、Boeing Crew Flight Test、Boe-CFT)はボーイング スターライナーの初めての有人ミッションとして計画されていた飛行試験であるとともに、2019年と2022年に行われたスターライナーの2回の無人飛行試験であるBoe-OFTおよびBoe-OFT 2に続く3回目の軌道飛行試験。

最初の有人試験飛行は当初は2017年の実施が計画されていた[2]。さまざまな遅延によって、CTFミッションの打ち上げは2023年7月21日以降に行われることになったが[3]、2023年8月にボーイングはパラシュートシステム、配線ハーネスおよび更なる調査のために2024年3月以降に遅延すると発表した[4]

このミッションには、バリー・E・ウィルモア(英語版)およびスニータ・ウィリアムズの2名のNASAの宇宙飛行士からなる乗員を一週間の試験飛行のために国際宇宙ステーションに飛行させることが含まれている。宇宙船は打ち上げに備えて2024年4月16日にアトラスロケットに結合された[5]

このフライトは5月7日 02:34 UTC(日本時間同日午前11:34、東部標準時2024年5月6日 10:34 PM)の打ち上げが予定されていたが、離昇2時間前に延期された[6]。ミッション中止の原因はユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)のアトラスVの酸素バルブの問題だった [注釈 3] [7][8]。最初の打ち上げ中止以降、打ち上げはスターライナーのサービスモジュールにおけるヘリウム漏洩のために繰り返し遅延している[9]。2回目の打ち上げの試みは6月1日 16:25 UTCに行われたが、地上の打ち上げシーケンスコンピューターが正しい運用コンフィギュレーションをロードできなかったために離昇の3分50秒前に中止された。次の打ち上げの機会は6月5日水曜日の14:52 UTC(10:52 AM EDT)以降となっている[10]


宇宙カプセル

CFTは、最初のOFTミッションで使用されたスターライナー カリプソ宇宙カプセルの2回目のミッションとなる予定である。NASAは、ボーイング社が2020年8月のCFTミッションに向けて、複数回の点検を経て機体を飛行用に再組み立てする準備を整え、新しいパラシュートとエアバッグを装着すると発表した。 CFTカプセルのドッキングシステムは、OFT2試験飛行で初公開された新しい再突入カバーに対応するために改造された[11]

クルー

当初、ニコール・オーナプ・マン(英語版)が軌道宇宙船の初飛行で飛行する最初の女性飛行士としてこのミッションに割り当てられていたが、その後、スペースX Crew-5ミッションでNASAの商業乗員輸送(英語版)の打ち上げで初めての女性指揮官として再割り当てされた[12]。2018年8月にこのミッションのパイロットして当初割り当てられていたエリック・ボーは、医学的理由で2019年1月22日にマイケル・フィンクと交替した。ボーはフィンケの後任として、NASAのジョンソン宇宙センターにある宇宙飛行士事務所の商業乗組員担当主任補佐に就任することになっている[13]。ボーイングの宇宙飛行士クリストファー・ファーガソンが指揮官としてこのフライトに割り当てられていたが、2020年10月7日にNASAの宇宙飛行士バリー・ウィルモア(英語版)と交替した。ファーガソンは交替の理由として家族の事情を挙げた[14]マシュー・ドミニク(英語版)が予備クルーとしてウィルモアに代わって加わった[15]

2022年4月18日に、NASAはバリー・ウィルモア(英語版)マイケル・フィンクおよびスニータ・ウィリアムズといった幹部クラスの宇宙飛行士の誰がこのミッションないしスターライナーの最初の実用ミッションに搭乗するかの最終決定はなされていないと述べた[16]。2022年6月16日、NASAはこのCFTミッションがウィルモアとウィリアムズによる2名搭乗の飛行試験であり、フィンクは予備の宇宙船テストパイロトとして訓練を受けて将来のミッションに割り当てられる有資格者にのこることを認めた[17]。ウィリアムズは、いずれかの形式の軌道宇宙船の初飛行に女性として搭乗する初めての宇宙飛行士になると見込まれている(ジュディス・レズニックスペースシャトル・ディスカバリーの初飛行に搭乗し、その後もエンデバーキャスリン・C・ソーントンが、クルードラゴン・レジリエンスシャノン・ウォーカーが、クルードラゴン エンデュランスケイラ・バロン(英語版)が、ジェシカ・ワトキンス(英語版)サマンサ・クリストフォレッティクルードラゴン・フリーダムの初飛行にそれぞれ搭乗した)。

正クルー

地位 乗組員
宇宙船指揮官 アメリカ合衆国の旗 バリー・ユージン・ウィルモア(英語版), NASA
3回目の宇宙飛行
パイロット アメリカ合衆国の旗 スニータ・ウィリアムズ, NASA
3回目の宇宙飛行

予備クルー

地位 乗組員
宇宙船指揮官 アメリカ合衆国の旗 マイケル・フィンク, NASA

ミッション

3回目のアトラスV N22型の打ち上げは2名搭乗したスターライナーを打ち上げる。宇宙船は国際宇宙ステーションにドッキングし、地球への帰還ではアメリカ合衆国南西部に着陸する。カプセルは地表におよそ6.4キロメートル毎時 (1.8 m/s; 350 ft/min)の速度で接近し、6個のエアバッグに載って着地する。カリプソと名付けられたこのカプセルはもともとはスターライナー カプセルの最初のOFTミッションで飛行している。このカプセルは2回目のフライトに向けて改修されている。

カプセルと同じく「カリプソ」と命名されたおもちゃのイッカクが、宇宙船が無重量状態に達した際にわかるように無重力インジケーターとして乗員に使用される[18]

これはアトラスVロケットによる初めての有人宇宙船の打ち上げとなる。Boe-CFTは、1960年代初期のマーキュリー計画以来となるアトラス ファミリーのロケットを使用する有人宇宙船の初めての打ち上げであり[19]、1968年10月のアポロ7号以来のケープカナベラル宇宙軍施設からの初めての有人宇宙船の打ち上げとなる[19]

宇宙ステーションのリソースとスケジュールのニーズに基づくと、2名のの宇宙飛行士テスト パイロットによる短期間のミッションで、宇宙ステーションへの有人運用ミッションを安全に飛行できるスターライナーの能力を実証することを含むCFTに関するNASAとボーイングのすべてのテスト目標を満たすのに十分である。宇宙ステーションへの乗組員輸送における不測の事態から保護するため、NASAはCFTのドッキング期間を最大6か月延長し、必要に応じて後で宇宙飛行士を追加する可能性がある[17]

このスターライナーは、アメリカ合衆国から打ち上げられた有人カプセルとして初めて陸上に着陸する。大気圏再突入後、3つのパラシュートが展開されてカプセルの速度を4マイル毎時 (350 ft/min; 1.8 m/s)まで減速する。地上に到達する前に6基のエアバッグが着地の衝撃を軽減するために展開される。ニューメキシコ州のホワイトサンズ・ミサイル実験場に2カ所、アリゾナ州のウィルコックス・プラヤ(英語版)とユタ州のダグウェイ実験場それぞれ1カ所の計4ヶ所が優先的着陸地点とされている。カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地は緊急時の着陸地点として用意されてる[20]

関連項目

ポータル 宇宙開発
ポータル 宇宙開発

脚注

注釈

  1. ^ N22は、アトラスVにペイロード フェアリングがなく、2基の固体ロケットブースターと、2基のセントール第2段エンジンが搭載されていることを示している。
  2. ^ 着陸候補地としては、ニューメキシコ州のホワイトサンズ・ミサイル実験場内の2か所、アリゾナ州のウィルコックス・プラヤ、ユタ州のダグウェイ試験場、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地などがある。
  3. ^ ボーイングはULAの株式の50%を所有しており、アトラスVの開発にも協力した。

出展

  1. ^ “International Space Station Status”. NASA. 2024年4月13日閲覧。 この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
  2. ^ “Boeing and SpaceX Selected to Build America's New Crew Space Transportation System”. NASA. (2014年9月16日). https://blogs.nasa.gov/commercialcrew/2014/09/16/boeing-and-spacex-selected-to-build-americas-new-crew-space-transportation-system/ 2023年4月1日閲覧。  この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
  3. ^ Foust, Jeff (2023年3月29日). “Starliner crewed test flight delayed to July”. SpaceNews. 2023年3月30日閲覧。
  4. ^ Berger, Eric (2023年8月7日). “Starliner undergoing three independent investigations as flight slips to 2024” (英語). Ars Technica. https://arstechnica.com/space/2023/08/starliner-undergoing-three-independent-investigations-as-flight-slips-to-2024/ 
  5. ^ “Boeing, ULA roll Starliner spacecraft out to pad 41 ahead of Crew Flight Test launch in May” (英語). SpaceflightNow. 2024年4月16日閲覧。
  6. ^ Speck, Emilee (2024年5月5日). “Watch live: Boeing Starliner ready to launch NASA astronauts from Florida” (英語). Fox Weather. https://www.foxweather.com/earth-space/boeing-starliner-nasa-astronaut-launch-cft 2024年5月7日閲覧。 
  7. ^ Speck, Emilee (2024年5月5日). “Watch live: Boeing Starliner ready to launch NASA astronauts from Florida”. Fox Weather. https://www.foxweather.com/earth-space/boeing-starliner-nasa-astronaut-launch-cft 2024年5月7日閲覧。 
  8. ^ William Harwood. “Starliner launch scrubbed by trouble with a valve in the Atlas 5's Centaur upper stage”. SpaceflightNow. 2024年5月7日閲覧。
  9. ^ Harwood, William (2024年5月21日). “NASA orders yet another delay for Boeing's hard-luck Starliner”. CBS News. 2024年5月22日閲覧。
  10. ^ “NASA foregoes Sunday launch, delaying Starliner takeoff to at least Wednesday”. SpaceflightNow.com (2024年6月1日). 2024年6月1日閲覧。
  11. ^ Clark, Stephen (2020年8月25日). “Boeing plans second Starliner test flight in December 2020 or January 2021”. Spaceflight Now. オリジナルの2022年5月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220518113810/https://spaceflightnow.com/2020/08/25/boeing-plans-second-starliner-test-flight-in-december-or-january/ 2020年8月26日閲覧。 
  12. ^ Potter, Sean (6 October 2021). "NASA Announces Astronaut Changes for Upcoming Commercial Crew Missions" (Press release). NASA. 2022年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。 この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
  13. ^ Granath, Bob (22 January 2019). "NASA Announces Updated Crew Assignment for Boeing Flight Test" (Press release). NASA. 2022年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月24日閲覧  この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
  14. ^ Roulette, Joey (2020年10月7日). “Boeing's top Starliner astronaut pulls out of space mission role”. Reuters. オリジナルの2022年5月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220518112633/https://www.reuters.com/article/idUSKBN26S2IC 2020年10月7日閲覧。 
  15. ^ Evans, Ben (2021年2月13日). “Lindgren, Hines Assigned to Crew-4 Dragon Mission, Will Launch Next Year”. AmericaSpace.com. オリジナルの2022年5月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220518113036/https://www.americaspace.com/2021/02/13/lindgren-hines-assigned-to-crew-4-dragon-mission-will-launch-next-year/ 2022年5月18日閲覧。 
  16. ^ Clark, Stephen (2022年5月18日). “Starliner astronauts eager to see results of crew capsule test flight”. Spaceflight Now. オリジナルの2022年5月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220523130644/https://spaceflightnow.com/2022/05/18/starliner-astronauts-eager-to-see-results-of-crew-capsule-test-flight/ 2022年5月19日閲覧。 
  17. ^ a b Potter, Sean (2022年6月16日). “NASA Updates Astronaut Assignments for Boeing Starliner Test Flight”. NASA. 2022年6月17日閲覧。 この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
  18. ^ “'Sparkly' narwhal toy trades sea for space as Starliner zero-g indicator”. collectSPACE (2024年5月6日). 2024年5月8日閲覧。
  19. ^ a b Sloan, Kaycee (2024年5月1日). “Astronauts to launch from Cape Canaveral for first human spaceflight in nearly 56 years”. WFLA-TV. https://www.wfla.com/glance-at-the-galaxy/astronauts-to-launch-from-cape-canaveral-for-first-human-spaceflight-in-nearly-56-years/ 2024年5月3日閲覧。 
  20. ^ “NASA's Boeing Crew Flight Test Mission Overview” (英語). NASA. 2024年6月1日閲覧。
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