ロスシー級フリゲート

ロスシー級フリゲート (改12型)
「ロスシー」(近代化改修前)
「ロスシー」(近代化改修前)
基本情報
種別 フリゲート
運用者  イギリス海軍
 ニュージーランド海軍
 南アフリカ海軍
建造期間 イギリス 1956年 - 1961年
就役期間 イギリス 1960年 - 1988年
同型艦 オーストラリアヤラ級護衛駆逐艦
建造数 14隻
イギリス9隻+ニュージーランド2隻+南アフリカ共和国3隻)
前級 12型 (ホイットビィ級)
次級 リアンダー級
要目
常備排水量 2,150トン→2,380トン[1]
満載排水量 2,560トン→2,800トン[1]
全長 112.7 m[1]
水線長 109.7 m[1]
最大幅 12.5 m[1]
吃水 5.2 m[1]
ボイラー 水管ボイラー×2缶
主機 Y-100蒸気タービン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 30,430 shp[2]
電源 1,140 kW[2]
速力 30ノット[2]
兵装 #諸元表を参照
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ロスシー級フリゲート: Rothesay-class frigate)は、イギリス海軍フリゲートの艦級[1]ホイットビィ級(12型)の小改正型であり、改12型フリゲート: Modified Type 12 frigate)とも称される[2][3]

設計

本級は、12型シリーズの端緒であるホイットビィ級の基本設計を踏襲しつつ、装備の更新およびレイアウトの改正を図った改良型である。このため、船体寸法や機関構成はホイットビィ級のものが踏襲された[1]。外見上の特徴としては、煙突に傾斜が付された点がある[3]

装備

当初の装備

電子装備はホイットビィ級の構成が踏襲されており、前檣に目標捕捉 (短距離対空捜索)用の293Q型レーダー、その直前には対水上捜索用の277Q型レーダーを搭載した。なお277Q型レーダーは高角測定にも用いることができた。ソナーとしては、捜索用の174型ソナーと、リンボー対潜迫撃砲の目標捕捉・射撃指揮用の170B型ソナーが搭載された[3]。また本級を含む1等艦の標準装備として、対潜戦用のJYA戦術状況表示装置(Automatic Surface Plot, ASP)も搭載された[4]

当初、高角機銃は70口径40mm連装機銃、機銃用方位盤としてMRS-8を搭載する予定であったが、後にイギリス海軍における70口径40mm機銃の装備計画そのものが撤回されたことから、1957年12月、代替装備として開発されたシーキャットGWS-20個艦防空ミサイルの搭載が決定され、これに対応して後部上部構造物を拡大した。しかしすぐには導入できなかったことから、「ロスシー」ではMk.5 56口径40mm連装機銃、その他の艦ではMk.7 56口径40mm単装機銃を搭載して竣工した。また艦砲はホイットビィ級の装備が踏襲され、45口径11.4cm連装砲(4.5インチ砲Mk.6)とMk.6M方位盤(275型レーダー装備)が装備された[3]

対潜兵器もホイットビィ級の装備が踏襲され、船首楼後端部を切り欠いてリンボー対潜迫撃砲2基が縦列に配置された。また長射程のMk.20「ビダー」対潜誘導魚雷の搭載を予定して魚雷発射管も搭載された。ホイットビィ級では片舷あたり固定式の単装発射管4基と旋回式発射管2基が搭載されたのに対し、本級では固定式発射管が連装2基に修正された。ただし、肝心の魚雷の開発断念に伴い、後に撤去された[3]

近代化改修

1966年から1972年にかけて、大規模な近代化改修が行われた。主眼となったのが中距離魚雷投射ヘリコプター(MATCH)の運用能力の付与で、後部上部構造物を拡大して格納庫が、またリンボー対潜迫撃砲のうち前方の1基を撤去して船楼甲板レベルにヘリコプター甲板が設けられた。これにより、ウェストランド ワスプ哨戒ヘリコプター1機の搭載・運用が可能になった[3]

またこれにあわせて装備の更新も図られた。予定通り、56口径40mm機銃を撤去してシーキャットGWS-20個艦防空ミサイルの4連装発射機が搭載されたほか、低空警戒用の293Q型レーダーは993型レーダーに、対水上捜索用の277Q型レーダーは978型レーダーに、また砲射撃指揮装置も戦後世代のMRS-3(903型レーダー)に換装された[3]。またソナーも177型ソナーに後日換装されている[1]

電波妨害装置の搭載は実現しなかったが、コーバス 8連装デコイ発射装置は搭載された[3]

諸元表

新造時 近代化改修後
武装 45口径11.4cm連装砲×1基
56口径40mm機銃×1基 シーキャットGWS-20短SAM
4連装発射機×1基
533mm対潜魚雷発射管×12門
※後日撤去もしくは未搭載
85口径20mm単装機銃×2基
リンボー対潜迫撃砲×2基 リンボー対潜迫撃砲×1基
艦載機 ウェストランド ワスプHAS.1
対潜ヘリコプター×1機
GFCS Mk.6M MRS-3
レーダ 293Q型 短距離対空捜索用 993型 短距離対空捜索用
277Q型 対水上捜索用 978型 対水上捜索用
ソナー 174型 捜索用 177型 捜索用
162型 海底捜索用
170型 攻撃用
電子戦 UA-3電波探知装置
短波方向探知機
コーバス 8連装デコイ発射機×2基
  • 近代化改修前の「ロンドンデリー」 船楼甲板の後端部を一部切り欠いて、リンボー対潜迫撃砲2基が設置されている。
    近代化改修前の「ロンドンデリー」
    船楼甲板の後端部を一部切り欠いて、リンボー対潜迫撃砲2基が設置されている。
  • 近代化改修後の「ヤーマス」 上部構造物後部を大型化してハンガーを設け、リンボー対潜迫撃砲のうち1基を撤去してヘリコプター甲板が設けられた。ハンガー上にはシーキャット短SAMの4連装発射機を装備している。
    近代化改修後の「ヤーマス」
    上部構造物後部を大型化してハンガーを設け、リンボー対潜迫撃砲のうち1基を撤去してヘリコプター甲板が設けられた。ハンガー上にはシーキャット短SAMの4連装発射機を装備している。
  • ニュージーランド海軍の「タラナキ」
    ニュージーランド海軍の「タラナキ」
  • サイモンズタウンの南アフリカ海軍博物館(英語版)に展示されている「プレジデント・クルーガー」の模型
    サイモンズタウン南アフリカ海軍博物館(英語版)に展示されている「プレジデント・クルーガー」の模型

同型艦

朝鮮戦争を受けて、東西間の第三次世界大戦の懸念が高まっていたこともあり、当初計画では1953/4年度、1954/5年度、1955/6年度で2隻ずつが建造されるところまで予定されていたが、1954年、第3次世界大戦の脅威はさしあたり遠のいたと判断されたことから、実際の予算化は1954/5年度に先送りされることになった。ネームシップは1956年11月6日に起工され、以後、1961年までに9隻が建造された。1955/6年度計画には、更に10番艦「ウェイマス」が追加される予定もあったが、これは一度キャンセルされたのち、全面的に改設計されたリアンダー級のネームシップとして竣工した[3]

イギリス海軍向けの9隻以外にもニュージーランド向けに2隻、南アフリカ共和国向けに3隻の同型艦が建造されており、前者はオタゴ級英語: Otago-class frigate)、後者はプレジデント級英語: President-class frigate)と呼称される。

イギリス海軍では、1980年代に入ると新型の22型フリゲートへの更新による退役艦が出始めたが、1982年のフォークランド紛争においては「ヤーマス」と「プリマス」の2隻がフォークランド諸島奪還の任を帯びた機動部隊に編入され出撃した。その後冷戦終結末期の1988年までに全艦退役した。ニュージーランドと南アフリカ共和国に輸出された姉妹艦も、イギリス海軍と同様に1980年代には全艦が退役した。

同型艦一覧
就役先 # 艦名 起工 就役 退役 備考
 イギリス海軍 F107 ロスシー
HMS Rothesay
1956年
11月6日
1960年
4月23日
1988年
3月
1988年に実艦標的として海没処分
F101 ヤーマス
HMS Yarmouth
1957年
11月29日
1960年
3月26日
1986年
4月30日
1987年に実艦標的として海没処分
F108 ロンドンデリー
HMS Londonderry
1956年
11月15日
1961年
10月18日
1984年
3月29日
1989年に実艦標的として海没処分
F129 リール
HMS Rhyl
1958年
1月29日
1960年
10月31日
1983年 1985年に実艦標的として海没処分
F126 プリマス
HMS Plymouth
1958年
7月1日
1961年
5月11日
1988年
4月28日
2014年スクラップ処分[5]
F115 バーウィック
HMS Berwick
1958年
6月16日
1961年
6月1日
1985年 1986年に実艦標的として海没処分
F113 ファルマス
HMS Falmouth
1957年
11月23日
1961年
7月25日
1984年
7月
1989年にスクラップ処分
F103 ローストフト
HMS Lowestoft
1958年
6月9日
1961年
9月26日
1985年 1986年6月8日に実艦標的として海没処分
F106 ブライトン
HMS Brighton
1957年
7月23日
1961年
9月28日
1981年 1985年にスクラップ処分
 ニュージーランド海軍 F111 オタゴ
HMNZS Otago
1957年
9月5日
1960年
6月22日
1983年
11月7日
1987年にスクラップとして売却解体
F148 タラナキ
HMNZS Taranaki
1958年
6月27日
1961年
3月28日
1982年
6月18日
スクラップとして売却解体
 南アフリカ海軍 F150 プレジデント・クルーガー
SAS President Kruger
1960年
4月6日
1962年
10月1日
1982年2月18日
補給艦「ターフェルバーグ」との衝突事故により沈没。
F147 プレジデント・ステイン
SAS President Steyn
1960年
5月20日
1963年
4月26日
1984年に売却、1990年スクラップとして解体
F145 プレジデント・プレトリアス
SAS President Pretorius
1960年
11月21日
1964年
3月4日
1985年に売却、1990年スクラップとして解体

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h i Robert Gardiner, ed (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. p. 519. ISBN 978-1557501325 
  2. ^ a b c d John E. Moore, ed (1975). Jane's Fighting Ships 1974-1975. Watts. p. 341. ASIN B000NHY68W 
  3. ^ a b c d e f g h i Norman Friedman (2012). “10 - The 1945 Frigate and Her Successors”. British Destroyers & Frigates: The Second World War & After. Naval Institute Press. pp. 196-217. ISBN 978-1473812796 
  4. ^ John Jordan『Warship 2016』Bloomsbury Publishing、2016年。ISBN 978-1844864379。 
  5. ^ “PICTURES: HMS Plymouth is finally towed away to be scrapped | Plymouth Herald”. web.archive.org (2015年11月25日). 2022年11月19日閲覧。

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