引張試験

引張試験
試験機

引張試験(ひっぱりしけん)とは、試料に破断するまで制御された張力をかけ、試料の引張強度、降伏点、伸び、絞りなどの機械的性質を測定する試験である[1]。それらの測定値から、ヤング率ポアソン比、降伏強さ、加工硬化特性などが算出され、機械製品を設計開発するときの材料の強度計算に使用される。

一軸引張試験は、等方性材料の機械的特性を得るために一般的に用いられ、金属プラスチックを試料としてよく行われる[2]。しかし岩石を試料とした試験はあまり行われない[2]

複合材料織物などの異方性材料の場合、二軸引張試験が必要である。

規格

金属
  • ASTM E8/E8M-13: "Standard Test Methods for Tension Testing of Metallic Materials" (2013)
  • ISO 6892-1: "Metallic materials. Tensile testing. Method of test at ambient temperature" (2009)
  • ISO 6892-2: "Metallic materials. Tensile testing. Method of test at elevated temperature" (2011)
  • JIS Z2241 金属材料引張試験方法(JIS Z 2201は廃止され、本規格に置き換えられた)
溶接材
  • JIS Z3040 溶接施工方法の確認試験方法
  • JIS Z3111 溶着金属の引張及び衝撃試験方法
  • JIS Z3121 突合せ溶接継手の引張試験方法
その他
  • ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics
  • ASTM D828 Standard test method for tensile properties of paper and paperboard using constant-rate-of-elongation apparatus
  • ASTM D882 Standard test method for tensile properties of thin plastic sheeting
  • ISO 37 rubber, vulcanized or thermoplastic—determination of tensile stress–strain properties
関連規格
  • JIS B 7721 引張試験機・圧縮試験機−力計測系の校正方法及び検証方法
  • JIS B 7741 一軸試験に使用する伸び計の検証方法

試験片

アルミニウム合金製の引張試験片。 左の2つの試験片は、円形の横断面およびねじ切りされた肩部を有する。右の2つは、鋸歯状のグリップを使用するために設計された平らな試験片。

試験片は規格に規定が定められている。基本、保持に利用する肩部が両端にあり、その間は肩部より細くなった一定の太さの平行部がある。

肩部の形状と固定方法 A:肩部と保持部がねじ切りされている様子 B:円筒形の肩部とserrated grip C:butt endの肩部とsplit collarの保持部 D:平坦な肩部とserrated grip E:穴が開いた平坦な肩部とピンによって保持される様子 試験サンプル各部の名称(英語) * 標点距離(gage length) * 平行部(Reduced Section) * 幅(Width)、直径(DIA)
肩部の形状と固定方法
A:肩部と保持部がねじ切りされている様子
B:円筒形の肩部とserrated grip
C:butt endの肩部とsplit collarの保持部
D:平坦な肩部とserrated grip
E:穴が開いた平坦な肩部とピンによって保持される様子
試験サンプル各部の名称(英語)
* 標点距離(gage length)
* 平行部(Reduced Section)
* 幅(Width)、直径(DIA)

試験方法

ひずみ線図、Reh部は上降伏点、ReL部は下降伏点と呼ぶ。Rmまでの伸びを一様伸びという。最大荷重点を過ぎると、試験片の一部にくびれが生じ、変形はこのくびれ部に集中する。くびれの成長とともに荷重は減少し、 やがてくびれ部から破断する。くびれ後の伸びを局所伸びという[3]

(1)事前に試験片の寸法計測を行った後、ひずみゲージを貼り付ける。(2)試験片を試験機に取り付け、伸び計を設置する。(3)試験機に試験条件(原点調整、ストロークレンジ、引張速度など)を入力し、データ収録装置の設定後に測定を開始する。(4)試験片が破断されるまで測定が行われる。

  • F:張力 Lo:標点距離元の長さ So(Ao):初期断面積
    F:張力
    Lo:標点距離元の長さ
    So(Ao):初期断面積
  • 試料破断のフェーズ: 1)くびれ発生 2)マイクロクラックの形成 3)マイクロクラックの合体 4)破断
    試料破断のフェーズ:
    1)くびれ発生
    2)マイクロクラックの形成
    3)マイクロクラックの合体
    4)破断

それらに結果から、ひずみε(標点距離の伸びた長さを元の標点距離で割った値)や応力σが算出される[4]

ε = Δ L L 0 = L L 0 L 0 {\displaystyle \varepsilon ={\frac {\Delta L}{L_{0}}}={\frac {L-L_{0}}{L_{0}}}}
σ = F A {\displaystyle \sigma ={\frac {F}{A}}}

脚注

  1. ^ 金属材料の引張試験の基礎(滋賀県工業技術総合センター)
  2. ^ a b 羽柴 2016, p. 7.
  3. ^ 金属材料の引張試験(岡山県立大学 材料・機械設計学研究室)
  4. ^ Davis, Joseph R. (2004). Tensile testing (2nd ed.). ASM International. ISBN 978-0-87170-806-9. https://books.google.com/books?id=5uRIb3emLY8C p.2

参考文献

  • 羽柴公博・谷和夫・岡田哲実・白鷺卓・及川寧己・若林成樹「岩石の一軸引張試験の方法と留意点」『Journal of MMIJ』第132巻第1号、2016年、7-13頁。 

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、引張試験に関連するカテゴリがあります。
典拠管理データベース: 国立図書館 ウィキデータを編集
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